“記憶”と時間感覚 〜映画『寝ても覚めても』〜

『寝ても覚めても』では猫がラストに重要な役割を果たします。写真は毎年出掛ける旅先の宿の猫ちゃん。寝ているところを無理に起こしてもらい撮影したので少し不機嫌です。

映画『寝ても覚めても』は、

突然いなくなった恋人が

忘れられないヒロインが、

かつての恋人と顔がそっくりな

男性に出会うことから展開していく物語です。

 

刺激的で謎めいた恋人との輝かしい記憶は

彼女の中で消し去られることがなく、

顔が同じでも性格は真逆の穏やかな男性との

日々がどんなに平和で満ち足りていても

心の奥底では満足できない。

無意識のうちに、かつての恋人との記憶に、

彼女の心は支配されたまま。

 

人の「情動」をつかさどる

大脳辺縁系(動物脳)には、

「時間」の感覚がないと

心理学の講義で教わりました。

かつて味わった強い怒りや恐れが

何かの拍子で現在のことのように蘇り、

理性的な判断ができなくなるのは

そのためであると。

 

ヒロインは恋人に唐突に再会し、

一般的な常識からすれば

“理性を失った”選択をします。

それまで“受け身”に見えたヒロインは、

その選択で、まるでスイッチが

入ったかのように自分から動き出します。

 

彼女は長い長い眠りから

覚めたように感じました。

「愛されることを求める」人から

「自ら愛することを知る」人へ。

か細く、いつも言い訳を

探していたようなヒロインが、

力強く立ち上がった瞬間でした。

 

個人的にはヒロインに共感はできませんでしたが、

あまりに自分の感情に正直な、

破天荒な言動の数々は、後半に進むにつれ

ある意味、清々しさを漂わせていました。

 

映画を観ながら、場面場面でどんな

感情が流れているのか、

推察しながら観るのも楽しいものです。

危険な人に惹かれるワクワク感、

自分自身の心の揺れへの戸惑いと不安、

安定した生活への安心感と倦怠など、

多くの感情がヒロインから読み取れます。

そういう意味でも見応え満点の作品でした。

 

『寝ても覚めても』

http://netemosametemo.jp