“鬼”の在処 〜井上荒野『あちらにいる鬼』〜

新発田市にある教会。ぜひ中を見学してみたいです。

作者の小説家の父・井上光晴と美貌の母、父の不倫相手だった小説家・瀬戸内寂聴がモデルのフィクション。

男は次々と愛人をつくりながら家庭を壊す気も妻と別れる気もない。どこかで妻が愛人の存在に気付くようにしている節もあり、小さな子どもが母親の愛情を試すために、わざと悪さを繰り返しているようです。

不倫相手だった小説家が、男との関係を切るために出家したのち、三人は不思議なバランスでずっとつながっていきます。男は小説家同士として、妻は同じ男を愛した同士として。それは男の死後も、妻が死ぬまで続きます。

作者はインタビューで自身の母のことを「謎」と話していますが、読んでいても、この母の気持ちが一番分からない。この女性の心の中には、純愛とか忍耐という言葉では説明がつかない、何か大きな、底の知れない深い深い闇がある感じがしました。

人はだれでも不可解な、理屈や倫理では割り切れないものを抱えている。“鬼”は普段は見えなくても、自分の中に棲んでいるのかもしれません。